フィットネスと鍼灸の知識、技術を掛け合わせ、「治療もできるパーソナルトレーナー」を目指す学生がいます。
先駆者として活躍する憧れの存在が、本校卒業生でもある杉山匡人先生。
お客様とのエピソードを交えながら、フィットネス×医療の相乗効果について語ります。
杉山 匡人さん
PHIピラティスジャパンマスタートレーナー、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、はり師、きゅう師。大学卒業後、本校ウエルネススポーツ科トレーナーコース(現・アスレティックトレーナーコース)と鍼灸学科で学ぶ。現在はPHIピラティスジャパン本部のマスタートレーナーとして本校で指導するほか、アスリートから一般の方まで、様々なクライアントへのパーソナルレッスンを行う
砂川 来暉さん
2004年生まれ、兵庫県立高砂高校出身。ライフ・フィットネストレーナーコース(以下、LFT)と鍼灸学科で学ぶダブル・ラーニング「医療+パーソナルトレーナー」1期生。現在、LFTコースの2年生としてトレーニング指導の技術を身につけながら、鍼灸学科午後部ではり(鍼)、きゅう(灸)の知識と技を習得中
どんなところに魅力を感じたの?
今、パーソナルトレーナーは巷にあふれていますよね。何か強みがあれば、他と差別化できるんじゃないかと考えたんです。杉山先生のお客様は、ケア目的で鍼灸治療を受けに来ることはありますか。
僕がいるスタジオはピラティスで身体を整えていくのが主軸だから、鍼灸目的の方はいないかな。でも、運動したくて通い始めたけど、実は身体の不調を抱えている、という人はとても多いよ。
それって、どういうことですか。
「カッコいい身体になりたい」のもあるだろうけど、「健康になりたい、身体の不調を運動で何とかしたい」というニーズもあるんだよ。
なるほど……!
ピラティスのレッスン中、「今日、ちょっと身体の動かし方がスムーズじゃないな」と感じて詳しく体調を聞くと、肝臓がよくない状態なのがわかるときもあったりね。
それは鍼灸師として、身体をチェックしているんですか。
そうだね。臓器の状態に気づけるのは、東洋医学の強みのひとつ。肝臓の調子が悪いと、周囲にある腹筋や肋骨の後ろ側が硬くなっている場合がある。以前、ハードな運動をしている訳じゃないのに体重が減っていた方が気がかりで、病院への受診を勧めたら、大きな病気が隠れていたことも。
発見できてよかったです。でも、「痩せた!」で終わっていた可能性もあったかもしれませんよね。
そこは医療の知識があるからこそだし、ちゃんとしたトレーナーなら「これぐらいの負荷しか与えていないのに、こんな風になるはずがない」って、頭に浮かぶはずだけどね。
PHIピラティスジャパン本部のマスタートレーナーとして後進を育てる杉山先生。本校でもマットピラティスの授業を担当しており、来年度からマシンピラティス(リフォーマー)のクラスがスタート予定
感情由来の不調にも気づけるのが鍼灸師。
東洋医学の知識があると、他にもメリットはありますか?
パーソナルトレーナーは、お客様とのコミュニケーションがとても重要。今、どんな悩みを抱えていて、どんな身体になりたいのかを知るには、豊富な会話の引き出しが不可欠だよ。東洋医学を学んでいると、お客様を知る手掛かりが増える。たとえば、五行(東洋医学のベースとなる、古代中国の思想)の考え方。「怒り」を表す臓器って、どこだったか覚えてる?
あっ、習いました(焦)、……肝臓?
そうそう。ほかにも悲しみは肺とか、感情と臓器が関連する考え方があるよね。お客様を見ていて、肝のラインがおかしくなっているなぁと思い、何かありましたか、と尋ねると「実は昨日、激怒するような出来事があって……」と打ち明けられたり。そうやって話すうちに、お客様の心が晴れてくる時もある。感情由来の身体の変化にアプローチできるのも、東洋医学ならでは。
きゅう(灸)の実技を練習中。同じクラスには、野球、バスケットボール等の競技と鍼灸の学びを両立する同級生も
授業中に、トレーニングアイデアが浮かぶ!?
逆に、鍼灸の領域ではカバーしづらいけど、運動療法が得意なことってありますか。
鍼灸は「身体の動き」にフォーカスしたアプローチが少ない気がする。あるにはあるけど、効果的なスポーツ動作に結びつけるには正直、少し足りないというか。運動療法は、たとえば腰痛の再発防止といった、整形外科的なトレーニングが得意。身体の使い方のクセが原因で起きる不調は、運動で正しい動きを覚えさせるのが一番効果的だから。
鍼灸の授業を受けていると、「この経絡を刺激すると動きが良くなるなら、その後にあの運動で筋肉を伸ばせばもっと良くなるんじゃないか」とか、ふっと浮かぶときがあります。さっき先生がおっしゃったような「五行」に基づいて、臓器だけじゃなく色や音といった他要素とトレーニングを掛け合わせられないかな、とか。
両方の勉強をしているからこそ思いつくアイデアだね。
※肩書き、インタビューの内容は取材当時のものです
元々、身体を動かすのが好きで、パーソナルトレーナーの仕事に興味がありました。高3の時、「医療+パーソナルトレーナー」が新設されると聞いて、「これだ!」と思ったんです。