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理事長だより

vol.50「人に伝える」

「うまいこと言うなあ!」

今年1月「第9回全国高等学校ビブリオバトル決勝大会」で優勝した、関西創価高等学校の藤野美紀子さんに関する読売新聞の記事を読みました。

ビブリオバトルとは出場者が人に読んでもらいたい本についてその魅力を熱く語り、参加者は自分が読みたいと思った本に投票し順位を競う知的競技のことです。

藤野さんは韓国で大ベストセラーになったパク・ソンヒョクさんの『勉強が面白くなる瞬間』について熱弁をふるいました。

「1人残らず勉強がしたくなっちゃう。この本は魔法の本です」と言う藤野さん自身の成績は優秀で、「本来、この本を読む必要のない私が読んだわけです」と参加者の笑いを誘ったそうです。そして本のおかげで「勉強が楽しめる人間になっちゃった。いま、私、最強です」と続けました。藤野さんは「趣味は友達の成績を上げること」で、各教科の得意な生徒が苦手な生徒に教える「さらば赤点!」プロジェクトを展開。さらに母親と先生に本を薦めたら資格試験の勉強を始めたそうです。参加者にも「年齢がいくつであってもチャレンジできる。もう一度夢を持ちませんか」と呼びかけました。

ビブリオバトルは読書感想文とは異なり「読んでみたい」と思わせることが重要です。お母さんや先生に与えた影響を語るなど、年齢層の幅広い参加者が「なるほど」と思う事例を入れ、見事に聞く人の心をつかんでいて、「うまいこと言うなあ!」と思わずうなりました。

人は、他者とのかかわりや交わりから離れて、ただ一人で生きていくことはできません。他者に伝える行為は社会で生きる以上必要不可欠ですが、いつもうまく伝えることができるわけではない。「こう言えばよかったな」ということがありませんか。ひとつのことを言うのでも楽しそうに言う、要点のみ言う、論理的に言う、自信がなくておどおど言うなど、その時々の言い方により伝わり方が違ってくる。自分の考えや思いが相手に伝わらないもどかしさはつらい。一方でうまく伝わったときはうれしいものです。

本校でも今年4月から履正社中学校学藝コースで「言語技術」教育を本格的に導入しました。中学1年生から中高一貫の6年間、授業として時間割に組み込み「読む、書く、話す、聞く」の日本語総合トレーニングを体系的に実施して行きます。「言語技術」を鍛えれば、論理的な思考力や行動力が大きく向上すると期待されています。特別な才能が必要というわけではなく、技術である以上訓練すれば上達するものです。6年間の学びや経験から是非とも体得してほしいと願っています。そして、やがて本校から関西創価高等学校の藤野さんのようなビブリオバトルの優勝者を輩出したいものです。

1位になった本のことを「チャンプ本」と言うそうで、私も藤野さんが紹介した『勉強が面白くなる瞬間』を読みました。Part1「勉強に手遅れなんて、ない」に書かれている「自分があきらめない限り、決して手遅れではありません」との内容、その通りだと共感。さすが「チャンプ本」と思った次第です。

【参考資料】

読売新聞 朝刊 「第9回全国高等学校ビブリオバトル決勝大会」特集記事

『勉強が面白くなる瞬間』(パク・ソンヒョク著・ダイヤモンド社発行)

全国高校ビブリオ、グランドチャンプ本は「勉強が面白くなる瞬間」:活字の学び (yomiuri.co.jp)

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