「マインドセット」の力について考えたことはありますか? マインドセットとは、物事に対する考え方や信念を指します。
心理学者キャロル・ドゥエックが提唱したこの概念には、「固定的マインドセット」と「成長的マインドセット」の2種類があります。固定的マインドセットを持つ人は、能力や才能は生まれつき決まっていて変わることはないと信じ、失敗を避けようとし、自己防御的になりやすい傾向があります。一方、成長的マインドセットを持つ人は、努力や経験によって能力や才能を向上させることができると考え、失敗を経験と捉え成長の一部であり、挑戦することを恐れない傾向があります。
マインドセットは、学習や仕事、そして日常生活のあらゆる場面に影響を与えます。成長的マインドセットを持つことで、困難に直面しても柔軟で前向きな姿勢を保ちやすくなり、乗り越える力を得ることができます。
成長的マインドセットは、いわば「プラス思考」とも言えます。アスリートたちが、「自分はできる」「自分はやれる」と信じることで目標達成に向かう思考に通じるものです。
「事実は変えられなくても解釈は変えられる」
この言葉は、史上最年少で上場企業の役員に就任した成田修造さんのものです。彼は起業家であり、エンジェル投資家(スタートアップ企業や新興企業に対して資金を提供する個人)としても知られていますが、その道のりは、平坦ではありませんでした。
成田さんの人生は、中学生のときに大きな試練に直面しました。父親が「人生をやり直したい」と告げて、突然姿を消したのです。この現実は、中学生の彼にとって非常に厳しいものでした。さらに、3年後には母親が脳出血で倒れ、右半身が不随となり、父親が残した借金が家族を追い込むこととなり、破産に至りました。
しかし、彼はこの絶望的な状況を見事に乗り越え、家事をこなしながら高校を卒業して慶應義塾大学に進学しました。彼の心には、常に起業の夢があり、その夢を追い続け、大学ではビジネスサークルに参加し、やがてクラウドワークスに入社して、学生の身でありながら役員に昇進しました。ところが、会社の上場に伴い、急激な規模の拡大が問題を引き起こし、株価は急落。またもや厳しい現実が彼を襲います。
それでも彼は、この困難を「逆境は人生に対する大切なメッセージ」と捉えました。その信念に基づき経営を見直し、わずか4年で売上100億円、営業利益10億円という驚異的な成果を達成しました。
母が倒れたあの日も、「きっとこれは、何か大きな意味があるに違いない」と自分に言い聞かせ、物事をポジティブに捉えるその信念が彼を支え続けました。まさに成長的マインドセットで人生を切り拓いていると言えます。
成田さんは次のように述べています。「プラス思考は性格ではなくスキルです。プラス思考を習得するには、関連する本を読んで実践してみることです。僕は、自己啓発書って、あながち間違っていない、人生を変えてくれると思っています。ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』とか、デール・カーネギーの『人を動かす』などを読んで、それを実践する。問題がおきたらまた本を読んで、こう捉えればいいのかと思い直す。その繰り返しです」。
「誰もが、他人より多少はうまくできること、褒められること、ストレスなくやれることってあると思う。それを起点にすることですよね。あとは自分を卑下しないこと。私なんてって思わなくていい。むしろ勘違いでもいいから、私はこれが得意だって思い込む」。
「むしろ、すべては勘違いから始まると言ってもいいくらいです。自信を持つだけで人はガラリと変わります。何かができるから自信を持てるというより、自信を持つからいろいろなことが回り始めるんです。ここに気付いてほしいですね。で、得意なことを伸ばしていけば、それが強みになります」。
ぜひ皆さんも、成長的マインドセットというこの強大な思考の力を手に入れてください。心の持ち方を変えることで、人生が劇的に変わる可能性を秘めています。成田さんのように挑戦に立ち向かい、自分の未来を切り拓いてほしいと思います。
【参考文献】
■父は蒸発、母は半身不随…壮絶な家庭で育った成田修造が「起業家として成功」できたワケ | 成田修造
「スタートアップは日本に残された唯一の希望」 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
■「逆張り思考 戦わずに圧倒的に勝つ人生戦略」
著作:成田修造・発行:KADOKAWA