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理事長だより

Vol.19 「ええやん!この曲!」

私は中学生の時、ふと耳にした曲に「ん?ええやん!この曲」と感動したことがあります。翌日、学校で音楽の先生に何の曲かを訊ねてみたら、「チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番」ということが分かりました。音楽の先生はその翌日から数ヶ月、ご自分のL P盤(レコード)を貸してくださいました。ピョートル・チャイコフスキーはロシア帝国の作曲家で、活躍したのは19世紀末。時代も国も異なる大阪のいち中学生の心にビシッとその曲は響きました。そのレコードのB面にカップリングされていたのが「ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番」。セルゲイ・ラフマニノフもロシア帝国出身の作曲家で、20世紀の前半まで活躍しました。が、これまた私の心にグサッと突き刺さり、以来、齢68歳の現在に至るもこの2つの作品が、クラシックではMy favoriteの双璧になっています。チャイコフスキーやラフマニノフをはじめ、古今東西、キラ星の天才たちが生み出した名曲の数々。作曲家が没した後も生き続け、地球のどこかで演奏され、歌い継がれ愛され続けています。時がどれほど過ぎようとも、今を生きる人々の魂を揺さぶる力。すごいことだと思いませんか。

少し以前の話題になりますが、2018年ニューズウィークのネット記事で、フランスに本社を構える音楽ストリーミング配信サービスDeezerが、イギリスのユーザー1000人を対象に行った調査結果が紹介されていました。それによると「人々が新しい音楽を発掘する努力をやめるのは平均して30歳と6ヶ月」だそうです。また、この記事では、ニュースサービス「ビジネス・インサイダー」からも引用し、「好きな音楽を聴いたときには、脳はドーパミンやセロトニンなどのいわゆる“幸せホルモン”を分泌するが、このような反応は特に思春期に強い」。「12〜22歳の脳があらゆる物事を吸収しようとする時期に、初めて聴いた音楽に対する愛着が強くなると分析している」と続けています。

年齢とは不思議なもので、なるほど中高年になってから新しいことにチャレンジする人もいますが、そのような人も含めて、多くの場合は好きなもの・ことの骨組みは10代の思春期から20代に形成されているようです。まさに今のみなさんの年代です。自分自身の経験からもそう思います。いろんなものを純粋に吸収できる時間はそう長くはないようです。脳の機能だけでなく、30歳あたりから仕事や子育ての時間が必要となり、自分の好きなことに使える時間が短くなるという事情もでてきます。

音楽については、今はいい時代ですね。You Tubeや定額配信サービスなどでいろんな曲を検索し、聴くことができるから「ええやん!この曲!」という出会いが多いかも知れません。そうなれば、できることならコンサートへ行き、生の演奏を聴けたらいいですね。

ただ、残念ながら、今は新型コロナの影響で行動が制限されています。でもやがて緩和され、With新型コロナでも安心出来るその時が来たら、思う存分愉しんで、自らの琴線に委ねてみることをお薦めします。

さてさて、私は心置きなくコンサートへ行ける日が戻ることを願いつつ、魂が揺さぶられるMy favoriteを聴きながら、秋の夜長を過ごすとしますか。

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