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理事長だより

Vol.16 「スティーブ・ジョブズは21歳で」

スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックがAppleをたちあげたのは21歳と25歳。Googleのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンはともに25歳、トーマス・エジソンが初めて特許をとったのが21歳、アルベルト・アインシュタインは26歳で特殊相対性理論を、グラハム・ベルは29歳で電話を発明、後に世界の家電王となる松下幸之助が今のパナソニックを大阪の片隅で創業したのは23歳…。

これらは話題の書籍「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成」で紹介されている改革者たちが、ことを起こした時の年齢です。著者である慶應義塾大学環境情報学部教授で、ヤフーCSOの安宅和人さんは「世の中を本質的に刷新したと言える人たちは、驚くほど若い人が多く、30代前半までに挑戦の開始が集中しているということだ。『ヤバい』未来を仕掛ける担い手として若者が本当に重要だ」と言っています。

著書によると、残念なことに日本はすでにデータ×AIの世界では大きく出遅れている状況にあります。しかし、過去の歴史をみると劇的に変化する技術革新の創成期第一フェーズでは、日本が最初から先んじたことは一度もありません。例えば、欧米で産業革命が18世紀から起こりはじめますが、その頃日本はまだ鎖国状態で、技術や産業など歴然とした差がありました。しかし産業革命の第二、三フェーズのころ、日本は明治維新をむかえ、海外から最先端の技術がもたらされます。するとそれらを吸収し、工夫を重ね、猛烈に諸外国に追いついていく。戦後になるとさらに進化を遂げ、自動車、家電そのほか新しいものづくりや産業を起こし、世界有数の経済大国に成長したことを安宅さんは解説しています。

だから、いま、我が国はデータ×AIの第一フェーズで遅れをとっていても、様々な分野で世界トップクラスを誇る技術を持っている。加えて、日本のこどもたちは小さな頃からドラえもんで登場する「ほんやくコンニャク」や「暗記パン」のような「こんなものがあったらいいな」という空想の世界を漫画やアニメを見て育っています。空想、妄想力はアイディアの創造につながるというのです。そして、日本の技術力と妄想力を、すでに成熟しているデータ×AI産業に組み合わせれば、もう一度日本は世界に躍り出ることができると説いています。また、その解決策として重要なのは若い人たちの教育とサポートであり、国は国家予算を教育にあてる必要性があると熱く語っています。

「若者たちの力」。「若い時にしかできないこと」。私は若者たちの力の源には「失うものがそんなにない」というのも大きいと思います。年齢がかさむといろんな考えや人間関係、しがらみのようなものが出てくることが多く、そして年齢を重ねて得られる経験値や知識も大切ですが、時にそれらが不安な気持ちを起こさせたり、頭でっかちになり、迷走してうまくいかないこともあるでしょう。だから若者であるという限られた貴重な時間をどう生きるかはとても大切なことだと考えています。

若いみなさんが、学んだスキルを時代の流れを読んで生かしてほしい。日本人が得意とする、すでに成立しているものをうまく利用して、工夫とやる気があれば何かできるような気がしませんか。まさに「創意工夫」。猛烈なスピードで進むデータ×AIの時代の中で、「若い力×学んだスキル」をもとに、新しいものを生み出してくれればと思っています。大いに期待しています。

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