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理事長だより

Vol.10 「謹賀新年 東京オリンピック・パラリンピックがやって来る」

2020年幕開け、新しい年が始まりました。本年も何卒よろしくお願い申しあげます。

今年はなんといっても、2020東京オリンピック・パラリンピックですね。1964年の東京大会の時、私はまだ小学生でしたが、男子マラソンでローマ大会に続き2連覇を成し遂げたエチオピアのアベベ選手や、「東洋の魔女」女子バレーボール日本代表が旧ソ連代表に勝ったときは興奮しました。そして戦いが終わり国籍を超えた選手たちが入り乱れ、肩や手を組んで楽しそうに入場してきた閉会式のワクワク感は鮮明に心に残っています。

オリンピック・パラリンピックの閉会式でのあの感動は、努力を極めて選ばれた世界トップクラスのアスリートやスタッフたちだからこそ、本人ですら想像を超えるドラマの集大成であり、それが私たちにも伝わってくるのだと思います。
例をあげればきりがありませんが、1984ロサンゼルス大会の女子マラソンでスイスのアンデルセン選手はふらつき、何度も倒れそうになりながらも立ち上がり、最後まであきらめずにゴールに向かいました。極限状態と戦う不屈の精神は私たちに挑戦する勇気を見せてくれました。

同じく、ロサンゼルス大会の男子柔道無差別級決勝で、日本代表の山下泰裕選手(現・日本オリンピック委員会会長)は左脚を負傷した状態で試合に挑みました。対戦相手のエジプト代表ラシュワン選手は決して左脚を狙いませんでした。山下選手は金メダルとなりましたが、表彰台に上がる山下選手に、ラシュワン選手が手を差し伸べた姿には胸が熱くなりました。

トリノ冬季大会女子クロスカントリーの試合では、カナダのレナー選手のストックが折れてしまうのですが、なんとライバルのノルウェー代表ホーケンスモーエン・チームコーチが彼女にストックを貸したのです。結果、カナダチームは銀メダル、ノルウェーは4位に終わりました。試合後、コーチは「反射的な行動で考える必要もなかった。互いに助け合うことが、ノルウェー・チームのポリシーだし、私自身のポリシーでもある。競技は対等な条件で行われるべきだ。すべての選手が2本のスキー、2本のストックで戦うことが当然なのだから」と語っています。

この話を聞いて、あなたはどう思いますか。コーチの立場ならどうしますか。「コーチの行動は素晴らしい!」と思う人が多いとは思いますが、「相手のミスも勝負の内。勝ち負けにこだわるべき」「ノルウェーチームのフェアプレーに対し、カナダの選手は勝ってもよいのか」と、様々なことを考えさせられる結果を生みました。
私は、正解はなく、人それぞれ千差万別の解釈があっていいと思っています。力の限りを尽くしたアスリートたちが紡ぐドラマを、一人ひとりが自分なりの感じ方、考え、刺激や影響を受ける。そしてスポーツを始めたり、前に進む勇気をもらったり、自分の人生に置き換えてみたりすることで、若い人たちに何かを得てほしいと願っています。
どんなドラマが生まれるのか。今から楽しみでなりません。

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